胆嚢粘液嚢腫について解説します!
2022.07.07(木)
胆嚢粘液嚢腫 について解説します!
〈発生機序〉
胆嚢は肝葉間に存在する袋状の臓器であり、胆汁を貯留しておくことが主な機能です。
胆嚢粘液嚢腫は胆汁の性質が変わってしまい、粘性を増したゼリー状の胆汁が胆嚢内に貯留する病態です。
場合によっては胆嚢から胆汁が排出されずに貯留しつづけ、破裂し腹腔内に胆汁が漏れ出してしまうこともあります。
中年齢から高年齢の犬で発生することが多く、原因ははっきりしていませんが、犬種(シェットランドシープドッグ、ミニチュアシュナウザーなど。チワワ、ポメラニアンなども発生が多いとされています)、ホルモン疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)、高脂血症などとの関連性が指摘されています。
〈症状〉
元気消失、食欲不振、嘔吐、黄疸(皮膚や眼球の白目部分、口の粘膜が黄色に見えます)、腹痛などの症状が認められることが多い一方で、健康診断などで偶然見つかるなど健康な子でも胆嚢粘液嚢腫を発症していることもあります。
〈診断〉
腹部の超音波画像検査で胆嚢の内部を確認しますが、熟練した獣医師でも判断に迷うことがあります。
その他、血液検査にて肝酵素の上昇、ビリルビン値の上昇、炎症マーカーの高値などが認められます。
(超音波検査での所見)
〈治療〉
胆嚢破裂、胆嚢粘液嚢腫による胆管閉塞が認められた際は生死に関わるため、早急な胆嚢摘出手術が必要になります。
上記以外の症例では内科的治療と外科的治療の明確な線引きは存在しておらず、治療法の選択には肝数値の上昇、超音波検査所見の他、その子の様々な要因を考慮する必要があります。
症状がなく、肝数値の上昇が認められない子は基本的に食事の変更や内服薬などの内科治療を行います。
また、胆嚢粘液嚢腫を誘発するホルモンの疾患があればその治療も同時に行います。
それぞれの治療のメリット、デメリットを知り、獣医師と話し合い今後の治療方針を決めることが重要になります。
(当院で外科摘出した胆嚢)
(貯留していた胆泥)
〈予後〉
手術中や手術後の合併症で亡くなってしまうこともありますが、手術を乗り越え状態が回復するとその後の経過は良好です。
胆嚢粘液嚢腫がありながら内科的治療のみでうまくコントロールできる子も多いようです。
ただし、内科的治療をしている場合は定期的な健診が必要であり、胆嚢粘液嚢腫に起因した症状が認められた場合は外科的治療への切り替えを検討することもあります。
[最後に獣医師からのひと言]
胆嚢粘液嚢腫は急激に悪化することもある病気です。
症状が出ていない場合にも、定期的に病院での検査をお勧めします。
症状がある場合など、必要と判断されたら早めに手術することが重要です!