【解説】子宮蓄膿症
2024.02.14(水)
流山市(江戸川台、初石、おおたかの森)、柏市(柏の葉、豊四季)、野田市(運河、梅郷、愛宕、清水公園、七光台)の皆様こんにちは。
千葉県流山市江戸川台にある、21動物病院-江戸川台- 院長の岡江です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は未避妊の犬猫に発症しやすい子宮蓄膿症について解説をします。
子宮蓄膿症とは?
子宮蓄膿症とは・・・
「子宮内膜の増殖と、細菌感染による炎症が起こり子宮内に膿性の液体が貯留する疾患」と定義されます。
子宮蓄膿症に分類はある?
2種類のタイプがあります。
・開放性子宮蓄膿症
外陰部からの膿性液排出が認められるタイプ。
比較的症状として気づきやすいと思います。
・閉鎖性子宮蓄膿症
外陰部からの膿性液排出が認められないタイプ。
こちらは気づきにくく重篤になりやすいので注意が必要です。
どんな子が発症しやすい?
中年齢の未避妊雌で発症しやすいと言われています。発症の平均年齢は8~10歳齢です。
発症しやすいタイミングは犬の場合、発情出血開始後1~2ヶ月後の黄体退行期に発症することが多いです。
猫の場合は交尾後、妊娠が不成立だった場合や何らかの原因で自発的に排卵した後に発症します。
発症には黄体ホルモン(プロジェステロン)が関与しています。
ではどのように発症する?メカニズムは?
犬:周期的な排卵後、黄体期に至りプロジェステロンが分泌。
↓
プロジェステロンの作用により子宮内膜が増殖。
↓
増殖した子宮内膜に細菌が感染。
↓
子宮蓄膿症発症。
猫:交尾刺激により排卵し黄体期に至りプロジェステロンが分泌
↓
プロジェステロンの作用により子宮内膜が増殖。
↓
増殖した子宮内膜に細菌が感染。
↓
子宮蓄膿症発症。
猫の子宮蓄膿症は犬に比べると発症率が低いといわれています。
理由は、犬は自然排卵しますが猫は交尾排卵動物であるため交尾刺激がなければ排卵せず、黄体期に至らないためです。
では、細菌はどこから感染するの?
子宮蓄膿症の主な原因菌は大腸菌です。感染経路は外陰部からの上行性感染、尿路感染、血行性感染、リンパ行性感染です。常にオムツを着けている子での発症が多い印象があります。
子宮蓄膿症の症状とは?
多飲、元気消失、食欲不振、嘔吐、外陰部からの滲出物、腹部圧痛が主な症状です。
外陰部からの滲出物は特徴的ですが、それ以外は他の疾患でも現れる非特異的な症状なので注意が必要です。
特に、閉鎖型で外陰部からの滲出液を認めない場合、自宅での様子では子宮蓄膿症を疑えない事も多いと思います。
また開放型の場合でも動物が陰部を舐めて滲出物を舐め取ってしまうと症状に気づけないこともあります。
子宮蓄膿症の診断は?
臨床徴候
外陰部からの滲出物、発熱、体温上昇、頻脈、呼吸促迫
血液検査
白血球数の上昇、BUN上昇、Cre上昇、ALP上昇、CRP上昇が認められることが多い。
腹部レントゲン検査
腫大した子宮が描出される。ただ、検出に限界があります。
超音波検査
子宮内部の液体の存在、子宮壁の肥厚の程度、子宮内膜の囊胞状病変の描出が可能。
子宮蓄膿症の治療は?
治療の選択肢は?
✓外科療法
第一選択となる治療法です。
当院でも多くの患者様が選択されています。
手術方法は子宮卵巣摘出術を実施します。ほとんどの場合、術後は速やかに回復していきます。
問題となっている臓器を外科的に完全摘出するため再発する事はありません。
しかし重症例の場合、必ずしも救命できるとは限りません。
✓内科療法
手術を選択できない以下のような場合に内科療法を実施します。
・動物の全身状態が悪く麻酔、手術自体がリスクとなる場合
・動物のご家族が手術を望まない場合
・将来、繁殖に供したい場合
当院ではプロジェステロン受容体拮抗薬を用いて内科治療を行っています。
従来のプロスタグランジン製剤に比べて副作用が少なく安全性が高いと言われています。
内科的に効果が認められる割合は46~100%と言われています。ただ子宮は残すため、再発するリスクがあります。
21動物病院での治療選択の方法は?
当院では飼い主様とのコミュニケーションをとても大事にしています。動物を触って、診断してコレだからこの治療だけです!と押し付けるような治療ではありません。コミュニケーションに十分な時間を取り、動物と飼い主の双方が十分な利益を受けられるように意識しています。
症状の重症度、飼い主様の通院できる頻度、動物のストレス、飲み薬ができるか、注射が大丈夫か、経済的な状況など含めて総合的に判断し、相談の上、治療方針を定めていきます。
子宮蓄膿症のまとめ
・子宮蓄膿症とは「子宮内膜の増殖と、細菌感染による炎症が起こり子宮内に膿性の液体が貯留する疾患」
・開放型と閉鎖型の2種類のタイプがある。閉鎖型は重篤になりやすい
・犬では中年齢の未避妊雌で発情出血開始後1~2ヶ月後に発症しやすい
・猫では犬に比べて発症率が低い
・閉鎖型の場合、症状が非特異的なので注意が必要。
・治療の第一選択は外科療法。場合によっては内科療法を選択することもある。
子宮蓄膿症についてご不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
セカンドオピニオンのご相談も受け付けております。お気軽にご来院ください。