【解説】犬の緑内障
2024.01.14(日)
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市(江戸川台、初石、おおたかの森)、柏市(柏の葉、豊四季)、野田市(運河、梅郷、愛宕、清水公園、七光台)の皆様こんにちは。
千葉県流山市江戸川台にある、21動物病院-江戸川台- 院長の岡江です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は犬の緑内障について解説をします。
緑内障とは?
眼球の角膜と水晶体の間の前房と呼ばれる部分には、「房水」と呼ばれる血液の代わりに栄養などを届ける液体が循環しています。通常、房水はブドウ膜の毛様体という部分で作られ、隅角と呼ばれる出口から眼球の外に排出されます。何らかの原因で房水の排出がうまくできなくなると前房内に房水が貯まりすぎてしまい、眼球内の圧力(眼圧)が高くなります。緑内障とは高眼圧により眼に痛みや視角障害を引き起こす疾患のことです。
緑内障の原因による分類
先天性緑内障
生まれつきの眼の奇形によるもので、3〜6ヶ月齢で眼圧が上昇します。犬ではまれです。
原発性緑内障
遺伝性のことが多い。隅角の形態に問題があり眼圧が上昇している事が多く、両眼同時に発症する事もありますが、片眼だけ発症する事もあります。片目だけ発症した場合では遅れてもう片方の眼も発症する事があります。
続発性緑内障
他の疾患が原因となり続発して発症します。
ぶどう膜炎、水晶体脱臼、眼内腫瘍、網膜剥離などにより房水排泄障害が起きます。
緑内障になりやすい犬種は?
柴犬 アメリカン・コッカー・スパニエル
シー・ズー トイ・プードル
ゴールデン・レトリバー ビーグル
チワワ パピヨン など
緑内障の症状は?
高眼圧により眼球が内側から圧迫され眼の不快感や痛みが生じます。痛みがあるときは瞬きの回数が増える、眼の近くを触られるのを嫌がるなどの症状がみられます。また、眼球の奥にある視神経がダメージを受けると、視覚が障害されます。治療が遅れると失明してしまうこともあります。慢性的に高眼圧が続くことで、眼球が膨らんで大きくなってしまう「牛眼」と呼ばれる状態になってしまうことがあります。また緑内障は眼球の強い痛みを伴うため眼球の症状だけでなく元気消失や食欲不振といった全身症状が現れることもあります。
全身症状
・元気がない
・食欲がない
眼の症状
・充血
・牛眼(目が大きくなる)
・目が白っぽく濁る
・痛そうに目をしょぼつかせる
・散瞳(瞳孔が開く)
・視覚障害(物にぶつかりやすくなる)
緑内障の検査・診断は?
眼圧計により眼圧が上昇していることを確認し、診断します。また、原因や重症度を調べるために以下のような検査が行われます。
眼底検査
目に光を当て、視神経乳頭や網膜の変化を観察し、重症度を判断します。
隅角検査
隅角と呼ばれる房水の通り道を観察し、隅角の広さや形態異常がないかを確認します。
細隙灯顕微鏡検査
眼圧上昇による眼球全体の変化や、他の眼疾患がないかを確認します。
超音波検査
水晶体脱臼や眼内腫瘍、網膜剥離がないかを確認します。また、眼球サイズを計測できます。
緑内障の治療は??
緑内障治療には、内科的治療と外科的治療があります。犬の目の状態によって、施される治療内容が異なります。
内科的治療
点眼治療がメインとなります。
点眼剤の作用で分類すると、2種類に分類されます。
・房水の産生を抑制する点眼
・房水の排出を促進する点眼
通常、必要な点眼薬を1日数回点眼してもらうことが必要となります。場合により眼圧下降作用のある全身投薬を行うこともあります。
外科的治療
外科的治療の利点としては長期的な内科的治療による点眼や通院の負担が軽減される一方、手術の内容によっては獣医眼科専門医レベルの熟練度が求められる手術もあります。
・急性期で視覚の回復を見込める場合や上昇した眼圧を下げる場合
前房穿刺、前房シャント術、毛様体凝固術
・視覚がない場合で緑内障による疼痛除去を目的として行う場合
硝子体内ゲンタマイシン注入術、シリコンインプラント(義眼)挿入術、眼球摘出術
外科的治療の利点としては長期的な内科的治療による点眼や通院の負担が軽減される一方、手術の内容によっては獣医眼科専門医レベルの熟練度が求められる手術もあります。
21動物病院での治療選択の方法は?
当院では飼い主様とのコミュニケーションをとても大事にしています。動物を触って、診断してコレだからこの治療だけです!と押し付けるような治療ではありません。コミュニケーションに十分な時間を取り、動物と飼い主の双方が十分な利益を受けられるように意識しています。
症状の重症度、飼い主様の通院できる頻度、動物のストレス、飲み薬ができるか、注射が大丈夫か、経済的な状況など含めて総合的に判断し、相談の上、治療方針を定めていきます。
緑内障の予後は?
緑内障は進行性の疾患です。一度緑内障となり進行し視神経が傷害され失明に至った眼は視角回復することはありません。
緑内障についてご不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
セカンドオピニオンのご相談も受け付けています。お気軽にご来院ください。